支援アイデア 療育の具体例と対処法

特定のフレーズを何度も繰り返す子どもの心理と対応策

子どもが「おはよう」という挨拶や、アニメのセリフを何度も繰り返して言い続ける場面。例えば、朝に「おはよう」を10回以上繰り返したり、お気に入りのアニメキャラクターのセリフを声に出して言い続けます。親が「もう分かったよ」と言っても止める気配がなく、最終的には「まだ言いたい!」と癇癪を起こすことも。このような状況では、親は「どう対応すればいいのか」と困ってしまうことが多いです。


1. 子どもがフレーズを繰り返す原因を理解する

特定のフレーズを何度も言い続ける行動には、子どもの発達段階や心理的な特性が関係しています。この行動の背景を理解することで、効果的な対応が可能になります。

主な原因

  • 安心感を得るため
    特定のフレーズを繰り返すことで、自分の中に安心感やリズム感を作り出し、気持ちを落ち着けています。
  • 聴覚刺激を楽しんでいる
    言葉を発する音や響き自体を楽しみ、その感覚的な満足感を求めて繰り返しています。
  • 達成感や楽しさを感じている
    お気に入りのセリフを言うことで楽しい気分になり、その感情をさらに強めようとしています。
  • 他者とのつながりを求めている
    同じフレーズを繰り返すことで親や周囲の人に反応を求めており、その反応が行動を強化しています。

2. 繰り返し行動への具体的な対処法

a. 子どもの行動に寄り添う

子どもの気持ちを否定せず、繰り返し行動に意味があることを理解した対応を取ります。

  • 共感する言葉をかける
    「そのセリフ、面白いんだね」「おはようをたくさん言いたくなるんだね」と気持ちに寄り添った言葉をかけます。
  • 理由を探る
    「どうしてそのセリフが好きなの?」と優しく質問し、子どもの考えを引き出します。

b. 時間や回数を限定する

繰り返し行動を続けることを許容しつつ、過剰にならないようルールを設定します。

  • 回数を決める
    「あと3回言ったら次のことをしようね」と具体的な回数を伝えることで、子どもが切り替えやすくなります。
  • タイマーを活用する
    「タイマーが鳴るまで言っていいよ」と時間を区切り、繰り返し行動に終わりを示します。

c. 別の活動に興味を引きつける

繰り返し行動を自然に止められるよう、新しい遊びや活動に誘導します。

  • フレーズを使った遊びを提案する
    「そのセリフを絵に描いてみよう」「このセリフを歌にしてみる?」と、繰り返し行動を他の活動に発展させます。
  • 興味のあるものに切り替える
    「そのセリフ、他のキャラクターならどう言うかな?」と新しいテーマを提案します。

d. 親子のやり取りを楽しむ

繰り返し行動を親子のコミュニケーションに変えることで、行動をポジティブな経験に変えます。

  • 一緒に繰り返してみる
    「じゃあママも一緒に言ってみるよ」と共感しながら関わると、子どもが満足しやすくなります。
  • 子どもに質問する
    「そのセリフ、次はどうなるの?」と問いかけることで、会話を広げます。

3. 繰り返し行動を予防するための工夫

a. 子どもの興味を広げる

特定のフレーズに固執しすぎないように、日常の中で新しい興味を引き出します。

  • 多様な遊びを提供する
    パズルや絵本、積み木など、フレーズに集中しすぎる状況を和らげる活動を増やします。
  • 外遊びや運動を取り入れる
    身体を動かす遊びや自然とのふれあいを通じて、繰り返し行動を忘れさせる環境を作ります。

b. 子どもの感覚的な欲求を満たす

繰り返し行動が感覚刺激を求めている場合、それを満たす別の方法を取り入れます。

  • 音遊びを増やす
    リズムを楽しむ楽器や音の出るおもちゃを活用し、聴覚的な刺激を他の形で満たします。
  • 感覚統合遊びを提供する
    砂遊びやスライムなど、触覚や視覚を刺激する活動を取り入れます。

c. 日常生活を安定させる

繰り返し行動がストレスや不安から来ている場合、安定した日常生活を整えることが有効です。

  • スケジュールを整える
    起床、食事、遊びの時間を一定にすることで、子どもが安心して過ごせる環境を作ります。
  • 視覚的なスケジュールを活用する
    一日の予定を絵や写真で示し、安心感を与えます。

まとめ

特定のフレーズを何度も言い続ける行動には、子どもの安心感や聴覚的な満足感を求める気持ちが隠れています。この行動を否定せず、共感を示しながら別の活動に切り替える工夫を取り入れることで、スムーズな対応が可能です。また、子どもの興味を広げ、感覚的な欲求を満たすことで、繰り返し行動を減らすことが期待できます。親子で楽しくコミュニケーションを取りながら、子どもの成長をサポートしていきましょう。

編集・監修者

合同会社Calux代表。社会福祉学修士、社会福祉士の資格を持ち、人間環境大学松山看護学部の研究員。児童発達支援・放課後等デイサービス「Camino」の管理者兼児童指導員として、障害を持つ子どもたちの未来を支援。システムエンジニアの経験を活かし、療育プログラムの開発やテクノロジーを活用した支援方法を実践。プログラミング教育や課題解決能力の育成に注力し、講演や執筆活動も展開している。

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